Supply Chain Management サプライチェーン・マネジメント

サプライチェーン・マネジメント

基本的な考え方

事業をグローバルに展開する中で、国際社会からの信頼を獲得するためには、当社グループだけでなく、サプライチェーン全体で責任ある取り組みが必要です。当社グループの主要事業は、サプライチェーンの中流に位置していますが、さらに上流の取引先の皆さまとともに、活動を推進することが、サプライチェーン全体の持続的な成長につながるものと考えています。

サプライチェーン管理の取り組み

イビデングループサプライチェーンCSRガイドライン

2008年に当社の購買基本方針に基づいた「お取引先さまへのお願い」を公開し、2009年に、環境負荷が低減された部品や材料を調達するしくみとして、「イビデングループグリーン調達ガイドライン」を発行しました。さらに、顧客や業界、国際社会からの要請、当社グループとして管理していく必要のある項目を、労働、安全衛生、環境保全、倫理・公正取引といった側面からまとめた、「イビデングループお取引先さまCSRガイドライン(以下CSRガイドラインという)」を2011年に発行しました。このCSRガイドラインは、業界団体RBAの行動規範の要求事項をおおむねカバーし、国際社会や業界団体の動きに合わせて定期的に改訂しています。現在は、持続可能な開発をめざす国際社会からの要請に応えていくために、イビデングループおよびサプライチェーン全体で取り組むべき方針として、「イビデングループサプライチェーンCSRガイドライン」と名称を変更しています。上記のガイドラインは当社ウェブサイト内購買方針にて公開し、国内外の取引先に遵守をお願いしています。
また当社は、CSRガイドラインのもとサプライチェーンの管理を確実に実行するため、購買部門の担当者への教育を実施しています。この教育では、サプライチェーンに対する期待事項であるCSRガイドライン等について改めて学ぶと共に、昨今のサプライチェーンを取り巻く、気候変動問題などの環境面、人権や労働などの社会面およびガバナンス面の世界的な社会課題やリスク・機会について理解し、今後当社としてそれらをどのように管理していくかについて認識を深めています。

取引先との協働とコミュニケーション

取引先の実態の確認や改善を推進するため、CSR調査を実施しています。重要項目で改善が必要と考えられる場合は、監査・訪問確認を実施し、必要に応じて是正・改善を依頼しています。なお、新規取引先に対しては、CSRガイドラインの遵守を誓約いただいたうえで、後述のCSR調査で労働、環境、安全、腐敗防止を含む倫理面の取り組み状態を確認し、取引を行っています。なお、CSR調査の質問事項について各社の回答内容から5段階のレイティングで評価し、サプライチェーン上のリスクを管理しています。
また、当社グループのサプライチェーン管理は、資材購買先に限定せず展開しています。日本国内では請負事業者、派遣事業者は、外国人労働者の増加など労務管理が複雑化する中で、リスク管理が重要になっています。各社とともにサプライチェーンの健全性を確保するため、個別の面談での情報共有や現状の確認などを定期的に進めています。また、お取引先さま向けESG取組み説明会を開催し、当社グループの考え方と事業環境の変化を含めた取り組みの背景の説明とともに、取引先へのESGに関する期待事項をお伝えしています。今後も取引先との継続的なコミュニケーションを通して、必要実施事項への対応や、社会課題の解決に向けた協力体制の強化に努めていきます。

取引先の取り組み状況の確認

当社は、取引内容、金額や取引の重要性、ESG(環境、社会、ガバナンス)への影響などのリスクを考慮したうえで、取引がある資材供給、工程請負、構内工事業者、労働派遣会社の中から、重要な取引先を特定しています。特定した全ての重要な取引先に対して、CSR調査を毎年実施し、取引先の取り組み状況を確認しています(調査対象は全ての取引金額のうち約50%程度をカバーしています)。調査の結果、不足項目は改善計画の提出を要請し、レベル向上をお願いしています。一例として、採用時に健康診断書を求めている場合、差別の恐れがあるため手順から削除を要請しています。また、特に重要な取引先は、直接サイトを訪問して実際の取り組みを確認し、改善を進めています。
2022年度、当社は児童労働や強制労働に関する重大な人権侵害につながるリスクが高い取引先ゼロを目標に、300社を対象としてCSR調査を実施しました。その結果、該当する取引先は0社で、深刻な人権侵害につながる事象は確認されていません。

イビデン・お取引先さまコンプライアンス通報窓口

当社と取引先の関係において、法令違反、不正および人権の侵害等を含むコンプライアンス上の問題点がある場合、取引先自らが通報することができる、取引先向けのコンプライアンス通報窓口を開設しました。社内向けの窓口と同様に、通報情報はプライバシーに十分配慮して取り扱われるとともに、通報を理由として不利益な取扱いを受けることは一切ありません。また通報窓口とは別に、意見や困りごとなどをより気軽に相談できるように「お取引先さま相談窓口」を設置し、取引先との連絡環境を整えています。
取引先向けの通報窓口および相談窓口の周知により、取引先の認知とその活用は進んでいます。今後も課題の早期発見と早期解決に向けて、取引先説明会などで継続的な周知を行います。

責任ある資源調達の対応

人権侵害や環境破壊の助長につながる、紛争地域および高リスク地域での違法な資源採掘が国際社会で大きな問題になっています。当社グループも紛争鉱物など責任ある資源調達に強い懸念を持っており、提供する製品への社会的責任として取り組んでいます。
CSRガイドラインの中で、紛争地域で行われる違法な採掘や、それによる人権侵害に加担するような資源調達を回避するように努めることを明記しています。当社のビジネスにおいて、こうした違法行為や人権侵害に加担することをできる限り避け、紛争地域で違法採掘された鉱石を使用しないことはもとより、対象となる資源の供給ルートについて、合理的な調査の実施と、誠実な開示を進めていきます。

サプライチェーン管理手順

責任ある鉱物調達問題への対応は、購買担当部門の協力のもと、ESG推進担当部門が中心となり実施しています。購買担当部門で収集した取引先の情報を、ESG推進担当部門で集約し、内容を確認・分析し、当社の関連する鉱物使用状況*1をまとめています。外部からのお問い合わせについては、営業部門がこれを受け、ESG推進担当部署長の承認のもと情報を提供しています。
当社は、OECDデューデリジェンスガイダンスを参照し、活動を進めています。取引先説明会で責任ある鉱物調達に対する課題と、当社の姿勢を説明し、取引先への調査票を通じて製錬および精製所の特定をはじめとした供給ルートの確認を行っています。また一部の取引先や関係する製錬会社を訪問し、取り組みについての説明と供給ルートとそのトレーサビリティ(材料・部品・工程などの履歴)の確認を行っています。当社は対象となる資源供給ルートの調査において、RMI*2のCMRT*3とEMRT*4を使用して実施しており、対象鉱物を利用する取引先には定期的に更新を要請しています。
また、毎年実施しているCSR調査にて、責任ある鉱物資源の調達を含むCSRガイドラインの遵守を明確に求め、サプライヤーから署名にて同意を取っています。

*1:スズ、タンタル、タングステン、金に加えて、コバルトとマイカに対する調査を実施しています。
*2:RMI(Responsible Mineral Initiative):350以上の企業や団体が加盟する、紛争非関与鉱物など責任ある調達を企業と連携して促進する国際団体。
*3:CMRT(Conflict Minerals Reporting Template):紛争鉱物などの報告のための調査フォーマット
*4:EMRT(Extended Mineral Reporting Template):コバルトと天然マイカ報告のための調査フォーマット

サプライチェーンの実態

当社が供給するセラミックス事業などの製品には対象の鉱物は含まれませんが、電子事業のパッケージ基板やプリント配線板には、スズ、金が含まれるものがあります。2022年度も継続的に取引先に対するデューデリジェンス調査を実施し、供給される鉱物に由来するすべての製錬所の特定を進めています。スズは主に東南アジア圏の製錬所に由来しており、金は日本のリサイクルメーカーを中心とした精錬所に由来しています。これらの製錬所・精錬所は全て、RMIの紛争鉱物フリープログラムまたは同等のプログラムを遵守していることが第三者機関より検証されていることを確認しています。(2023年7月現在)
このことから、紛争地域および高リスク地域での違法な資源採掘に加担するような鉱物を使用している証拠は確認されていません。今後も、定期的なサプライチェーンの情報更新と、認証製錬所使用を推進することで、当社のサプライチェーンの中で紛争や人権侵害などに加担する調達が行われないように管理を継続していきます。