対処すべき課題

全般市況

 今後の世界経済の見通しにつきましては、中国、新興国経済の先行きの不透明感や、米国及び欧州の政策の不確実性への懸念が高まるなど、先行きを予測することはますます難しくなっております。また、外国為替市場も、経済及び政策動向の影響により不安定に推移するものと思われます。当社グループにおきましては、これまで構築してまいりましたグローバルな生産体制を機動的かつ柔軟に運用することで、リスクを最小限に留めてまいります。

既存事業の競争力強化

電子事業

 今年度の当社電子事業の市場におきましては、パソコン市場の減速や、ハイエンドスマートフォン市場の成長鈍化等による企業間競争に加え、ファンアウトウエハーレベルパッケージ(FO-WLP)の上市による影響が継続することにより、厳しい環境が見込まれますが、従来から当社が強みを持つ最先端分野におけるシェア拡大に加え、IoT、データセンター、車載といった新分野と顧客の拡大に継続して取り組むことで、主力事業としての収益水準に復元させてまいります。

(ご参考)

持続的成長への課題

既存分野で培った電子基板の微細配線技術とグローバル生産体制を活かして、成長分野へ

パソコンやスマートフォンで培った電子基板の微細配線技術と生産能力を活かし、ビジネスや生活シーンで急速に広まりつつあるIoT分野、これらの進化とともに規模・容量の拡大が求められるデータセンター、更には今後自動運転やコネクティッドカー技術などの進展で高速大容量通信が求められる車載分野向けの事業拡大を推進してまいります。

セラミック事業

 セラミック事業におきましては、欧州をはじめとする世界的な排ガス規制強化の流れを受け、顧客の製品需要も規制強化に対応した高機能な次世代仕様製品の割合が増加しつつあります。また、欧州を中心としたディーゼル乗用車の大幅減少に加え、世界的なハイブリッドやガソリン車への転換といった厳しい市場環境が続きます。こうした事業環境・製品需要の変化を受け、既存の3事業に加え、ガソリン車、ハイブリッド車向けの新規開発製品の顧客提案を進めることで、排気系分野における事業競争力を一層強化すると共に、新たな用途に向けた拡大を図ってまいります。

(ご参考)

ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)市場

先進国の乗用車向けが停滞する一方、環境規制強化を背景に、2020年以降は新興国の大型車向けが市場を牽引

持続的成長への課題

パワトレイン多様化の動きを捉える

主要国における環境規制強化の流れから、完成車メーカーは続々と次世代パワトレインへの対応方針を打ち出しています。その一方、電池やインフラ面での課題も指摘されており、当社では、2020年代には既存の内燃機関はピークアウトするものの、2040年にかけては、HV、PHVを含めた内燃機関を併用するパワトレインが主力の位置を維持するものとみています。今後、成長著しい新興国向けの大型ディーゼル、HV、PHV向けと、排気系分野における多様化するニーズへの対応で競争力を強化しつつ、創出したキャッシュを源泉に当社のコア技術と社会的ニーズをマッチさせた新たな用途開発を併せて進めてまいります。

その他事業

 その他事業におきましては、国内グループ各社の独自の競争力を持った製品による事業拡大と、電力事業により、当社グループの安定的な収益源としての位置づけを確かなものにしてまいります。

新たな事業の柱づくりが急務

 また、中長期での安定成長に向け、既存の「電子事業」「セラミック事業」及び「その他事業」に続く新たな事業の柱の構築のため、2017年度に「自動車機能製品」「将来モビリティ製品」「先進セラミック」及び「バイオマテリアル製品」の4つの開発センターを立ち上げました。電子・セラミックの両事業で培ってきた基礎技術をベースに、全社の知見をこの4つの開発センターに集約し、第3の事業の柱となる新製品・新事業を構築していきます。その一環として、特に「自動車機能製品」「将来モビリティ製品」の開発を加速するべく、株式会社デンソーと2017年4月27日付で資本業務提携を締結しました。これにより、両社で今後、次世代排気システムの共同開発やパワトレインの多様化に対応した電動化領域の協業を進めていきます。さらには電子基板からセラミックまで、幅広く両社の強みを補完し合い、新たなイノベーションを創出してまいります。今年度の当社グループを取り巻く事業環境は、依然として厳しくかつ不透明ではありますが、既存事業の競争力強化と新製品の上市に向けた取り組みを確実に進め、事業の持続的な成長を実現してまいります。

次の100年に向かって

 当社グループでは、環境の変化を乗り越え、次の100年も持続的な成長を実現するため、2018年度より始動する新たな5ヵ年の中期経営計画「To The Next Stage 110 Plan」を策定しました。新計画におきましては、人財育成を基盤に、既存事業の競争力強化と新規事業の立ち上げにより、安定成長を実現すると共に、全てのステークホルダーの皆様より信頼される会社に向け、ESG(環境安全・社会貢献・コーポレートガバナンス)経営を推進してまいります。

 当社グループといたしましては、これらの経営諸課題に着実に対処することで、収益基盤を一層強固なものとし、厳しい企業間競争を勝ち抜いていく所存でございます。


5ヵ年中期経営計画
To The Next Stage 110 Plan
(2018年度から2022年度まで)

環境の変化を乗り越え、次の100年も持続的な成長を実現する。

活動の4本柱

1 | 既存事業の競争力強化

電子
既存領域(モバイル、PC)におけるシェア維持、新領域(IoT、AI、データセンター、車載)で拡大

セラミック
新興国市場で排気系事業拡大と新用途の開発

国内
独自競争力(ビジネスモデル)構築で安定成長

2 | 新規事業の拡大

開発センターの早期事業化
アライアンスによるオープンイノベーション
社内ベンチャー制度による起業家(アントプレナー)育成

3 | 人財育成

ワークライフバランスを実現する働き方改革「5つの施策」
1. 生産性改善
2. 人事教育制度
3. 労働時間管理の徹底
4. 多様な社員が活躍できる環境整備
5. IT技術の活用

4 | ESG経営の推進

コーポレートガバナンス、環境経営、社会貢献、株主還元


業績目標


新規事業の拡大

4つの開発センターを設立
 持続的成長の未来を創る、新たな4つの研究開発分野にフォーカスし、社会のニーズを捉えた新たな製品を早期に市場投入することを目的に4つの開発センターを設立いたしました。

自動車機能製品
開発センター

当社のセラミック成形・焼成技術をコアに「大気よりクリーン」な排気を実現するHV&PHV用高効率・高性能エンジン吸排気システムの提供を目指します。

将来モビリティ製品
開発センター

PHV&EVのための省エネルギーと快適性を追求した高機能エネルギー(電気・熱・音)制御材料を開発し、新たな価値を提供していきます。

先進セラミック
開発センター

当社の高温セラミック成膜技術、黒鉛製品製造技術を活かした航空機エンジンの燃費を飛躍的に向上させる軽量・高耐熱セラミック複合タービン部材の提供を目指します。

バイオマテリアル製品
開発センター

当社独自のバイオ技術による高生産性・高機能化を実現する植物活力剤、水のみでヒトへの吸収性を向上させた化粧品・健康食品向け機能性成分材料の提供を目指します。

HV:Hybrid Vehicle (ハイブリッドカー)
PHV:Plug-in Hybrid Vehicle (プラグインハイブリッドカー)
EV:Electric Vehicle (電気自動車)

人財育成

 中期経営計画の達成と持続的成長の実現に向け、イビデンの経営・事業を強力に推進できるマネジメント人財の育成と、当社が培ってきた技術を応用し、新たな価値を創出するイノベーター、それをビジネスとして成功させるアントプレナーといった多種多様な人財の育成、また、全社員がイビデンウェイを理解・実践しイキイキと活躍するための教育体系や、働きやすい職場環境の整備を人財育成の基本戦略と位置付け、人的資源の高度化を図ってまいります。

人財育成体系
 永続的に成長・発展し続ける企業への体質強化に結びつく人財育成体系を構築するために、資格ごとの人財像を明確にし、全社共通教育、選抜教育、環境/労働安全衛生教育、専門教育と大きく分類して実践しています。実際の教育の実施に当たっては、人事担当部門が、中期経営計画や、経営層・受講者のニーズを分析・加味し、全社教育体系を作成しています。

女性活躍推進
 当社の女性活躍推進は2010年度よりスタートし、両立支援制度の改善や研修開催等の活動を実施してきました。当期は各部署より選ばれた女性社員とその上司を対象とした女性活躍推進活動(ポジティブ・アクション)の研修プログラムをキックオフしました。後に続く女性社員のロールモデルと、その芽を育むリーダーを育成してまいります。

健康経営
 当社では、社員の健康水準を持続的成長性のバロメーターと考え、社員の心身の健康維持・向上に取り組んでいます。例えば、社員食堂での健康食イベントや社員の運動習慣化を目指したイベントの実施、また、メンタルヘルスケアとして、ストレスチェックシステムを用いたセルフケアの推進や管理監督者の啓発なども行っています。これらの活動が評価され、経済産業省が主催する「健康経営優良法人」(ホワイト500)の認定を2年連続で受けています。

ESG経営の推進

環境経営
 当社は、所属する業界団体の行動規範、100%再生可能エネルギーでの事業運営を志向する顧客からの高い要求水準に対し、水力、ガスタービンコージェネレーション、太陽光など多様な自家発電によるクリーンエネルギーを活用した生産活動の推進や、環境リスク低減、省エネルギー・資源循環など、サプライチェーンと一体となって推進してまいります。また、製品分野においても、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)や、触媒担体保持・シール材(AFP)、NOx浄化用触媒担体(SCR)など、主にディーゼル車の排気系分野での環境貢献製品が当社の主力事業の一翼を担っております。引き続き「イビデンウェイ」のもと、生産活動における更なる環境負荷低減、また今後予想されるモビリティ環境の変化や社会的課題を捉えた製品開発で市場と社会からの支持を獲得し、地球環境と共存しながら持続可能な発展を目指してまいります。

成長投資と株主還元について

研究開発費の推移
 現状の売上高比率5%以上を維持しつつ、今後は注力分野である4つの開発センターを軸に研究開発投資を実施し、新製品の早期事業化を目指します。

資本政策の考え方
 当社は、当社グループの事業拡大、収益力の向上による株主価値の拡大を目指しており、中期経営計画を開示しております。事業環境の変化に対し安定的な経営を行うために、必要となる十分な株主資本の水準と株主構成を保持することを資本政策の基本としております。また、株主還元につきましては、連結配当性向30%を目処とし、長期安定配当とのバランスを総合的に検討して実施しております。

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2018/06/15 16:00:00 +0900
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